特集
Special feature
庭のあるくらしの
楽しみ方
育てて楽しい !
家庭菜園
自分で育てた野菜を収穫し、食卓で味わう体験は、庭のあるくらしの楽しみの一つ。音楽家であり植物愛好家の良原リエさんのお宅にお邪魔して、家庭菜園の魅力やコツについて伺いました。
01
日に日に大きくなる野菜に感動 !
庭がワクワクする菜園に
子供の頃、田舎の祖父母の家には小さな畑があり、あらゆる野菜を作っていました。畑の周りにはいろいろな果樹が植えられていて、どの季節にも何かしらの実がなっていたんです。それがとっても魅力的で私の憧れでした。今、私の庭でも果樹を育てて楽しんでいます。ちょうどグミの実が色づいてきたところです(取材時は5月)。グミの実は子供も大好きで、勝手に摘んで食べたりしています。
家庭菜園の魅力は何といっても自分で作った野菜を、フレッシュな状態で食べられること。夏野菜や豆類などはうまく育つとその時期には毎日のように収穫できるので、旬の恵みを食卓でたっぷりと味わうことができます。また、薬味が必要なとき、庭に出ればシソを収穫することができます。“ちょっとだけアレが欲しい”というときこそ、家庭菜園があると便利だなと感じています。
また、『野菜が育つ様子を知ることができる』のも、とても面白い体験です。『野菜は植物であって、子孫を残すために生きていて、その命の途中をいただいている』ということ。それを目の当たりにして、食べ物を大切にしようという気持ちがより一層強くなりました。ところで以前、経験のために畑を借りたことがあります。キャベツやハクサイなどの大きな葉物野菜は広い土地が必要で、葉が十分巻くまでに結構時間がかかるんです。自分で育てたキャベツなら、土地代と時間を考えれば500円でも安すぎると思ってしまいますが、スーパーではもっと安く手に入れることができる。それは本当にありがたいことなんだ、と実感しました。この経験は、一緒に畑仕事をした子供にとっても、いい勉強になったなと思っています。
02
プランターひとつでもOK !
家庭菜園の始め方
まずは育てたい植物を選びましょう。初心者の方にはミニトマトなどの夏野菜や、バジルなどのハーブがおすすめです。最初は苗から始めてみるのがいいですよ。苗はある程度育った状態なので、発芽の失敗もなく、育てやすいと思います。スペースと相談して、庭に直接植える「地植え」とプランターなどで育てる「鉢植え」のどちらにするか考えます。地植えは根を広く張れるため、大きく育ててたくさん収穫したいという方向け。よく掘り起こすなどの土づくりが必要です。「鉢植え」は小さな庭でも扱いやすく、移動できるところがメリット。景観のコントロールもしやすいですね。季節によって変わる日の当たり具合に合わせて、一番いい場所に置くこともできます。鉢植えの場合は培養土を使うと手軽に始められます。
こぼれ種で生えてきたゴボウや三つ葉。近くには半日陰でも育つ「トレニア」を植えています
庭によって、日当たりや風の通りなどは違いますし、その庭の中でも乾燥している場所、ジメジメしている場所など違いがあります。例えばトマトはアンデス山脈の高原地帯が原産で、雨が少ない乾燥地帯のため、高温多湿が苦手です。だからうまく育たないな、と思ったら庭の中でもよく風が通り、乾燥している場所に移動してみてください。野菜がよく育つ環境というのは、その野菜の「原産地」がヒントになります。産地の気候を調べて、できるだけ似た環境を見つけることが上手に育てるコツですね。
庭にどんな樹木や果樹を植えるか迷う場合は、ご近所の庭をさりげなくチェックしてみてください。ご近所でよく育っているなら、それはその土地に合っているということ。私もご近所で鈴なりのレモンの木を見つけたので、自宅の庭に迎えてみました。毎年必ず実をつけて楽しませてくれています。
03
手軽にできる「コンパニオンプランツ」と「リボベジ」
ナス、ネギ、ナスタチウム、枝豆を寄せ植え。花を組み合わせることで、見た目が華やかになる効果も
初心者の方におすすめの栽培方法に、『コンパニオンプランツ』があります。これは一緒に育てるとお互いにいい影響を与え合う植物の組み合わせのこと。よく知られているのがトマトとバジルです。トマトは高原地帯の植物で水分をあまり必要としませんが、バジルはインドや熱帯アジア原産で高温多湿の環境に強い特徴があります。そのため、一緒に植えるとトマトには余分な水分をバジルが吸収して、土の中の水分量がお互いに良いバランスになります。その他にもネギの香りには虫を遠ざける効果があり、根には土の中の病原菌を抑える働きがあるとされています。写真でナスと一緒に植えているナスタチウムというハーブは、『トラッププランツ』とも呼ばれ、アブラムシなどの害虫を自分におびき寄せ、他の植物を守る『おとり』のような役割を果たしてくれます。枝豆などのマメ科の植物は空気中から窒素を取り込んで、土の中に還元する働きがあります。
また、高さの違う植物を一緒に植えることにもメリットが。背が高くならない花やハーブを植えることで土の乾燥を防いだり、雨の泥はねから野菜の葉を守ることができます。
庭に並んだ鉢植えの中にはリボベジもたくさん。芽が出るかどうか、再生するかどうか、気になる植物は実験を楽しんでいます
もう一つご紹介したいのが、『リボーンベジタブル(リボベジ)』です。野菜の切れ端を水に浸して葉を再生させたり、果物の種を土に蒔いて育てることで、リボベジという言葉がまだなかった30年くらい前から続けています。トウミョウの再生が有名ですが、特定の野菜に決めているわけではなく、台所にある食材で育ちそうなものはなんでも挑戦してきました。特におすすめなのはコマツナです。根元を3~4cm残して、水を入れたコップなどに浸しておくと、新しい葉が出てきます。そのまま収穫してもいいですが、根が伸びてきたら土に植え替えると大きく育ちます。コマツナやキャベツ、ハクサイなどのアブラナ科の野菜は、春先になると「とう立ち」して、茎を伸ばした先に菜の花をつけます。それらがまたおいしくて、春の楽しみなんです。
一度の失敗で諦めず
トライ&エラーを楽しんで
今までいくつかの庭で家庭菜園をしてきましたが、庭の環境も、育ちやすい野菜もそれぞれ違っていました。実験が好きなので、失敗も数え切れないほど。たとえ失敗したとしても、「経験が一つ増えた」と思って諦めずに長い目で楽しんでくださいね。
Photo by Keiko Sugawara
Text by Yoko Toyoizumi
Design by Takanobu Higuchi
Edit by Hajime Sasa(Rhino)