特集
Special feature
レコードのある
くらし
初めてでも楽しめる
リスニング入門
今、世界的にブームが再燃しているアナログレコード。
レコード愛好家としても知られる別所哲也さんに、
今だからこその魅力や、ビギナーの楽しみ方について
語っていただきました。
俳優
別所 哲也さん
1990年、日米合作映画でハリウッドデビュー。その後、『レ・ミゼラブル』『ミス・サイゴン』などの舞台や映画、ドラマ、ラジオなどで幅広く活躍中。2009年からは『J-WAVE TOKYO MORNING
RADIO』のナビゲーターを務める。1999年より、日本発の国際短編映画祭『ショートショート フィルムフェスティバル & アジア』を主宰し、文化庁長官表彰を受ける。米国俳優協会(SAG)会員。
Instagram:
@tetsuya_bessho
今だからこそ面白い
レコードの魅力とは
「50代以上の世代には懐かしく、若い世代には新鮮なアナログレコード。日本ではここ数年、生産数が大幅に増えているといいます。アメリカやイギリスでは、レコードの売り上げがCDを上回る年もあるのだとか。
ストリーミングサービスで音楽を聴くのが当たり前になり、お金にも形がなくなったこの時代ですが、本来人間は重さや手触りや匂いなどを五感で確認したいという本能があると思うんです。日常生活はどんどんデジタル化されて便利になっていく一方で、目に見えるものや実際に触れられるものの魅力が、もう一度見直されている印象がありますね。レコードジャケットを手に取る楽しみとか、若い世代にとってはその感覚が新しい発見だったのではないでしょうか。
レコードの音の魅力は、デジタルで聴くのとは違うゆがみや柔らかさ、温かみを感じられるところです。僕らの世代はいったんレコードから離れ、デジタルのクリアな音を楽しんできましたが、人間は元々不完全な生き物だと思うので、レコードが持つ“完璧ではない音”に、一周回って引かれているのだと思います。
レコードを聴くためには、レコードプレーヤーの電源を入れる、回転数を合わせる、レコードをセットする、針を落とす、などの一連の作業が必要です。昔はこれをできるだけ省くためにデジタル化が進んで今がありますが、逆に今ではこの手間が体験として価値のあるものになっています。何でもプロセスをスキップできるこの時代に、あえて聴くことに手間をかけることで、気持ちが入り、じっくりと音を味わいながら楽しめる感覚がありますね」
ビギナーでもすぐに始められる
“現代のレコード環境”
「昭和の時代はレコードプレーヤーにアンプとスピーカーを別々につないでいたので、フルセットで場所も取るし、割とお金もかかりました。それが今ではレコードプレーヤーにアンプもスピーカーも内蔵されているものが安価で手に入るようになり、僕も一体型のタイプを新しく買って自宅に置いています。さらに最近ではBluetoothを搭載しているモデルもあるので、スマホやヘッドホンにつないでレコードの音を聴くことができます。そういった進化により、幅広い世代の人が手軽にレコードを楽しめる環境になっています。
また、アナログレコードの売り上げが伸びる中で過去の名盤や人気作の再発盤も出ていて、昔は高くて手が出せなかったものも比較的買いやすくなりました。現代の人気アーティストがCDとレコードを両方リリースする例も増えていて、わが家の10代の娘も聴いています。娘はレコードをインテリアのように部屋に飾って楽しんでいますが、ジャケットの魅力というのも大きいですよね。アーティスト自身や作品の世界観が詰まったアートワークを手に取って味わえるのは、デジタルの音楽にはない魅力だと思っています」
初めての一枚に選びやすい
レコード・ジャンルガイド
「音楽にはあまり詳しくないけれど、レコードライフを始めてみたい」という方のために、ビギナーでも楽しめる、おすすめのジャンルを3つ教えていただきました。
シティポップ
「海外からも注目されているシティポップですが、僕らの世代にとっては懐かしく、若い世代には新しい魅力があります。山下達郎さん、ユーミン(松任谷由実)さん、大滝詠一さん──おすすめを挙げたらきりがありません。再発盤もたくさん出ていて、ジャケットもすてきなのでそこも楽しいですね」
ロック
「1960〜1980年代のレコード全盛期だった時代のロックもおすすめです。代表的なのはビートルズやローリング・ストーンズなど。この時代にはアルバムを通して、反戦や社会風刺など、コンセプトを持った作品が数多く登場していて面白いです」
ジャズ
「ジャズの中でも昔のアコースティックなジャズは、レコードで聴くと味わいが増す気がします。モダンジャズの即興性やライブ感もレコードとの相性がいいですね。特にライブ盤は補正されたクリアな音とは違う、いい意味でいびつな、不完全な音にワクワクします」
デジタルの時代だからこそ
心に染みる音があります
「かつてレコードを聴いていた人も初めての人も、レコードが持つ音の柔らかさや優しさにぜひ触れてもらいたいですね。質量や手触り、ジャケットのアートワークだけでなく、手間をかけて聴き、丁寧にしまうところまでが、すてきな音楽体験になると思います」
Illustration by Keiko Tomura
Text by Yoko Toyoizumi
Design by Takanobu Higuchi
Edit by Hajime Sasa(Rhino)