ふれあい 2026年10月号 Vol.135

特集 Special feature

いま温泉に
惹かれる理由

PART01

令和の温泉の愉しみ方

日本は世界屈指の温泉天国。
全国に約3,000の温泉地があり、老若男女問わず人気を集めています。そして令和の今、
温泉へ行く目的には「変化」が見られるそう。
令和流の温泉の愉しみ方を、温泉ジャーナリストの植竹深雪さんに教えていただきました。

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温泉ジャーナリスト

植竹 深雪さん

地方の放送局に勤務していた際に温泉の魅力にひかれ、温泉ジャーナリストの道へ。これまでに国内外4,100以上の温泉を訪問。各種メディアでの執筆や講演活動を行い温泉の魅力や過ごし方を広める傍ら、2013年に「ヤドコミュニケーションズ」を開業。ホテルや旅館の経営サポートを軸に、コンサルや運営代行、マーケティングなども行っている。

植竹 深雪さん
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昭和、平成、そして令和へ。
時代の流れとともに変化する温泉文化

昭和時代、温泉旅行といえば会社や家族との旅行がメイン。温泉を楽しむというよりも「ごちそう+宴会でリフレッシュ」というイメージが強い方も多いのではないでしょうか。平成に入ってネットが当たり前の世界となり、ブログ等で情報を発信する方が増えると、これまで情報が手に入らなかった小さな温泉宿にスポットが当たり、温泉=非日常を味わう場所として楽しむ方が増えていきました。特に平成半ばからはSNSブームが起こり、美しい景色、広い露天風呂、特別感のあるお食事……と、視覚的に優れた「映える」温泉が人気に。

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このような状況が変わったのは、平成の終盤から令和にかけて。スマホの普及により眼精疲労がもたらされ、動画閲覧により睡眠時間が削られる日々。仕事内容がより高度化し、対人ストレスも上昇。そんな日常が続いて「疲れ」を感じる方が増えたことも一因かもしれません。免疫力が高まる湯、疲労回復に効く湯というように、よりシビアに温泉の持つ薬理的な効果に注目する方が増えています。これまでは「楽しければ、映えれば、何でもいい」だった温泉が、「確実に何かを得られる」ものに変わりました。また、近年の円安傾向も温泉人気に拍車をかけています。

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植竹さんが語る、
令和ならではの温泉時間

令和も8年目となり、慌ただしい日常から離れ、温泉で心身を癒やす時間を求める人も少なくありません。何よりも温泉の魅力は、自然の力を使ってラクになれること。スマホやパソコンで検索すれば、今の自分にピッタリな効能を持つ温泉が見つかる時代、サプリメント感覚で泉質を選んで楽しむのが「令和流」です。疲労回復や乾燥肌の緩和を求めるなら炭酸泉や炭酸水素塩泉、冷え性の改善や血の巡りを整えたいなら塩化物泉や硫酸塩泉、不眠や軽い傷の治癒なら単純温泉……と、自分の体が求めている泉質の湯を選ぶことが、令和キーワードの「コスパ・タイパ」を高めるコツでもあるようです。

また、宿そのものに「個性」があることが求められる時代にもなっています。滞在中に何かを体験できたり、その宿でしか味わえない何かを堪能できたり。これも、令和ならではの特徴となっています。

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くじゅう連山(大分県)の麓にある『七里田温泉』の下湯は、炭酸体感日本一と評されるラムネの湯(高濃度炭酸泉)。湯に漬かると、あっという間に気泡が絡み付きます

温泉の効果とともに注目されているのが「食」。行きたい温泉地を決めたら、その地にある宿でいただける食事をチェックし、宿泊する旅館やホテルを選ぶのもいいでしょう。近年、郷土料理を現代風にアレンジして人気を博している宿や、薬膳料理でより癒やしを与えてくれる宿など、食で個性を押し出す宿が増えています。

アナウンサー時代に温泉の“沼”にハマった私。以前は、一度の旅であちらこちらの温泉を巡るなど「温泉に入ること」だけを目的としていました。いまは、季節が変わったら再び足を運び、その土地ならではの味覚や史跡を楽しむなど、一つの温泉にじっくり向き合うようになりました。以前はランチをいただく時間があったら、お湯に入りたいと思っていました。しかしいまは、宿での食事もしっかり堪能。早起きして、朝風呂に漬かり、宿の朝食をいただくようになり、とても健康的な旅をするようになりました。この「健康的な毎日」が、温泉効果の何よりの“たまもの”だと感じています。

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箱根強羅公園の温泉宿で味わった薬膳香る和牛料理も美味でした

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飛騨エリアの人気料理「朴葉味噌」。地元に根差した郷土料理が味わえる宿も人気があります

03

温泉ジャーナリストが教える、
知っておきたい温泉豆知識

Q1.
温泉の入浴方法。
ただ漬かるだけでいい?
A1.
泉質により、効能を高める
入浴法があります!

温泉は効能も大切ですが、「入り方」も重要なもの。温泉成分の恩恵をしっかり受け取るためにも、温泉に入る前に脱衣室に掲示されている入浴方法をチェックしたり、宿のスタッフに効果的な入浴方法を確認したりするといいでしょう。上がり湯をしないよう推奨している湯や、入浴後に血行が良くなるので必ず座って休むよう推奨している湯など、さまざまです。指定の入浴方法がない場合も、一気に長湯をせず5~10分ほど漬かったら休憩する、というように体に負担をかけないよう「分割浴」を行うのがコツ。また、水風呂が用意されていれば、温かい湯と冷たい湯に順番に漬かる「温冷交互浴(温泉交互浴)」が、安眠効果抜群なのでおすすめです。

Q2.
「源泉かけ流し」「循環」「加水」「加温」。源泉かけ流しが一番効果的?
A2.
入浴しやすいよう整えてあるだけ。
どの湯も効果はあります。

日本の温泉法では、25℃以上の温度で湧出すれば「温泉」として認定されます。草津温泉のように90℃の熱湯が湧く温泉もあれば、下部温泉のように、30℃の冷泉が湧き出る温泉もあります。こうした場合、加水したり、加温したりするのが一般的です。また、湧出量が少ない温泉の場合は循環させてお湯を再利用することも。基本的にはきちんとろ過して不純物を取り除き、消毒殺菌されているので、源泉かけ流しと変わらない効果を得ることができます。温泉も「ナマもの」ですので「鮮度の良さ」が大切なのは確かですが、源泉かけ流しにこだわり過ぎるのはナンセンスと言えるでしょう。

Text by Megumi Waguri
Design by Takanobu Higuchi
Edit by Hajime Sasa(Rhino)